2010年10月27日
あれも愛、これも愛・・Eps2
20数年前、都会の大型サロンで働いていた頃・・
1年目の仕事は、シャンプーと掃除。
当時は毎日忙しく、1日に10~15名は当たり前、土日は30名は
シャンプーしていました。
もちろん手は腕まで荒れほうだいでしたが、
同僚達も仲がよく、いい先輩に恵まれ、夢を抱いて田舎から出てきた凛は、
何もかもが新鮮で、怖いものなど何もなかったように思います。
シャンプーにも自信がついてきた
入社して2度目の春・・初めてご来店されたN様のシャンプーを担当しました。
薄いグレーの生地に桜吹雪の刺繍が施された着物を、粋に着こなし、
ちょっとセレブな雰囲気。
アップされた髪を解いて、ブラッシングすると・・・・異臭が・・
いつもアップするので、自分ではほとんど洗わないのだとか・・・
通常2シャンのところ、4回も洗いました。
しかも、N様はご注文の多いお客様でした。
まだ若く、純情だった凛は汗だくになりながら必死で洗ったのです。
その日から、N様は週3回お見えになるようになり、
毎回シャンプーを指名してくださるようになりました。
いつも辛口のN様・・
「今日はちからがないわよ!!ご飯たべてるの?。」
「蒸しタオルがぬるいわっ。」
凛は褒められる事はありませんでしたが、
なぜか、N様が来るのが楽しみになり
サロンのスタッフも、アップを担当していた店長もみんなN様の事が好きでした。
N様がお見えになると、店内がぱっと明るくなり和服の着こなしや、
立ち居振る舞い、辛口の会話の中に感じる思いやり・・憧れの女性でした。
「スタイリストになったら、あなたアップして頂戴ねっ。練習しなきゃだめよっ!」
よく渇も入れられたものです。
入社して4度目の春・・N様は、濃紺の生地に菖蒲の花が大胆に描かれた、
友禅の着物でお見えになりました。
凛はここ1ヶ月の間N様が痩せていくのを感じていたのですが、
プライドの高いN様に余計な事は言えません。
いつものようにシャンプーしていると
「しばらく、来れなくなるから目一杯洗って!!」
と、N様・・・
なぜか聞く事もできず、一生懸命洗いました。
その日からN様はお見えになる事はありませんでした。
入社して5度目の春・・スタイリストになった凛は毎日忙しく、新入生にシャンプーを
指導する立場に・・
そんなある日、見知らぬ年配の御婦人が店長と何やら話しをしています。
N様のお母様でした。
N様が入院されている事、余命幾ばくも無い事、そして・・・
凛にシャンプーして貰いたいと言っていると・・・
店長からすぐに病院に行くよう言われ、お母様と向かいました。
約1年振りに再会したN様は、自慢のロングヘアーの面影はなく
髪は半分位抜け落ち、痩せ細った腕に点滴のチューブがやけに太く見えました。
でも、凛をみるととても喜んでくれてシャンプーの間中
辛口トーク、病気をジョークで笑いとばしていたのです。
凛は、また3日後に来る約束をして帰りました。
訃報を聞いたのは、その2日後でした。約束のシャンプーができないまま
N様は帰らぬ人となってしまいました。
サロンのスタッフ全員でお通夜に行きました。
白ゆりに囲まれた、元気のいい頃のN様の遺影から
威勢のいい声が聞こえてきそうで、涙が止まりませんでした。
N様から凛宛てにと、お母様が手紙を渡されました。
そこには、いままでの感謝の気持ちと、励ましの言葉、そしてさいごに
「たかがしゃんぷー、されどシャンプー、あなどるなかれ!!」と
書いてあったのです。
泣きながら思わず笑ってしまいました。
そこには、N様と凛にしかわからない何かが・・・
出逢いとは不思議なものです。
時々ふっとN様の事を思い出します。
これもある意味愛だったのかな・・・
ちゃんちゃん
